本日は、『評価』のお話をします。
評価の方法や基準は会社によって違いますので、今回の内容が全ての読者のみなさんに当てはまる『正解』ではないということだけは、予め理解しておいてください。しかし、これから評価をする立場を目指す人、評価をする立場になったばかりの人には間違いなく役に立つ内容が含まれていますし、評価をする立場になって数年経っているような人も、本来の評価の目的など、思い出すことができると思います。
それでは見ていきましょう。
評価の仕組み
まずはこれからの記事の内容がすんなりと入っていくように、私の会社の評価の仕組みを説明しておきます。
評価の進め方
アルバイトは上期・下期に分かれているのに対して、本社員は年間での評価となります。
評価の流れ
- 目標設定
- 中間面談
- 業務報告面談
- 評価FB面談
まずは上司と部下で目標を決め、中間面談で進捗を確認・アドバイスをし、業務報告面談で部下は頑張ったことを上司に報告する。最後にフィードバック面談で決定評価を告げ、来季に向けた課題を確認する。
このステップが、アルバイトは年2回あり、本社員は年1回であると思ってください。
評価決定の基準
評価の肝とも言える評価基準ですが、私の会社は数値で表すことができる『業績』と、数値で表すことができない『コンピテンシー』に分かれています。
コンピテンシーとは?
成果に繋がる行動特性
私の会社はこの2つを50%・50%の比率で評価し、総合評価を決定します。
例えば歩いて5分のところに大型スーパーが出店、もともとあった地域密着型の小規模スーパーの売上は、みるみる落ち、目標未達となってしまった。そんな時、『業績』だけで評価をしてしまうと、間違いないく最低評価になります。しかし、そんな厳しい状況下でも、間違いなく成果に繋がるアクションを取っていることが認められれば、『コンピテンシー』で多少なり救済はできます。また、逆のパターンで、近隣の大型スーパーが閉店、都市開発が進み客数も急増、売上も急成長している店舗があるとして、何をしても売上はたちます。そんな好調な店舗のスタッフが機械のようにただただ働いていたり、店長が事務所から一歩もでないような現状維持だったとしたら、成果に繋がる行動は認められるものではありません。
『コンピテンシー』を評価基準に組み込むことで、明らかな外的要因による業績不振をある程度カバーできます。
評価者
評価者は現場に一番近く、最前線でマネジメントしている私のようなMgrで、これを一次評価と呼んでいます。
次に私たちMgrの上司(副センター長)へレポート。これが二次評価となり、最終的にセンター長が承認となります。
現場に一番近いところで部下たちを見ているのはMgrなので、副センター長が二次評価で一次評価を覆すようなことは滅多にありません。
評価の段階
5段階評価となります。

評価決定方法
評価決定方法は、相対評価です。
絶対評価と相対評価
絶対評価とは?
予め設けられた評価基準に対しての達成度で評価
相対評価とは?
組織内でどの位置に分布されるかで評価
相対評価とは、簡単に言えば昔の学校です。簡単な例を出すと、生徒数3人のクラスでテストの平均が80点、90点、100点の生徒がいるとして、80点の生徒はC、90点の生徒はB、100点の生徒はAとなる。こんなイメージです。日本の教育現場にも、こんな酷い評価制度を用いていた時代があるのです。
そんな評価制度を、私の会社も用いています。
しかし実は、一次評価・二次評価の時点では絶対評価を用います。つまり、各チームの絶対評価によって出揃った評価を基にして、センター全体で分布を決める相対評価に移行していくのです。イメージとしては、各チームA評価をした人が1人ずつ、センタートータルで計3人のA評価を受けた人がいるとして、それを全体で考えた時には1人にしなければいけないため、2人をB+に落とす必要がある。こんな感じです。
私の会社の評価の仕組みはざっとこんな感じになります。
ここからは、最後に説明した『Aの人数が多いからB+に落とす人を選ぶ』や『Bの人数が多いからB+に上げる人を選ぶ』などの議論をする『評価会議』のお話になっていきます。
準備不足による最悪なスタート
評価会議は7月28日に行われたのですが、実はこの日を迎えるまで、なかなかタイトなスケジュールでした。
上期の業務報告面談を行うようにセンター長から各Mgrに指示が出されたのが15日前後。23日までに一次評価者は面談を終え、センター長へ評価を提出するという流れでした。
幸い私のチームは人数がたった9人だったので段取り良くスケジューリングができ、22日の時点で評価を提出できたのですが、他のチームは人数も多い。それだけではなく、商品量によって日々の作業量が大きく変わるカテゴリー。面談期間はお世辞にも長いとは言えませんでした。
そんな中、評価会議は行われました。
こちらが今現在報告をいただいている評価内容になりますが、まだ提出できていないチームがありますね。


口を開いたのは私の元相方SMgr。
私が5月に輸送Mgrに異動する前は、SMgrと私の2人で30人規模のチームをマネジメントしていました。
私が異動になり、1人でこの大人数のマネジメントをしていたのです。

○○さんはA...。○○さんは...。

SMgrが口頭で評価を読み上げ、センター長が打ち込んでいく。
ただただこの光景が5~10分続きました。
会議は1時間半の予定でしたが、準備不足により会議のスタートは定刻から10分後となりました。
では始めていきましょうか。

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SMgrのチームは人数も多く、面談には時間を要します。もっと時間に余裕を持たせられるように、面談開始指示は早めにしてあげてください。また、議論をするうえで、私たちは自分のチームの部下の評価だけでなく、他チームの評価にも事前に目を通しておくべきではないでしょうか。
ここから1時間20分(本当は1時間半の予定だったけど)という短い時間で議論をして結論を出すためには、各自が事前にしっかり資料に目を通し、意見を整理して、整理された意見を持ち寄って、この場ではそれをぶつけるだけの状態にする必要があります。
申し訳ない。
ガッキーさん、ありがとう。

評価会議はこんな最悪のスタートを切りました。
ハロー効果
会議の最初の議題はアルバイトの評価。
各チームから絶対評価によって提出された評価内容を、相対評価の分布に落とし込むと、B+の人数が多く、B+からAに1名、Bに2名を移動させなければいけないことに。

ただ、組織の方針に逆らうことはできない。変えたければ自分が組織の上流にいかなければいけない。組織とはそういうもの。
私の葛藤を誰も知る由もなく、無情にも会議は進んでいく。

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こうなる場合のことも考えていました。この中ではKさんが1番評価が低いです。限りなくBに近いB+だと評価していたため、Bにしていただいて問題ありません。
私はB+をつけられた人たちが名を連ねているエクセルを見て、私の部下のKさんが劣っていると感じることができたため、素直に彼をBにする意見を口にした。
SMgrに聞きたいのですが、Mさんはあの一件のことを加味してのB+評価ですか?


実は議題に挙がったMさんは、私のかつての直属の部下。23歳と若く、本社員を目指して奮闘している私の希望だった。
そんな彼はとある日の仕事帰り、同じ時間帯のスタッフと4人で外で長時間、大声で会話していた。仕事が終わる時間は25時。その頃はトラックのアイドリング音で近隣から苦情をもらっている時期でもあった。
センター長はその一件を非常に気にしているようだった。
Mさんは業績がA、コンピテンシーがBでB+だけれど、僕はコンピテンシーがC。総合評価はBだと思う。
厳しいようだけれど、彼はそれだけのことをしたと思っている。

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その後もMさんに関する議論は続き、結論は業績がA、コンピテンシーがC。総合評価がBと決まった。
私が輸送に異動になった後、私の見えないところでミスがあったり、これまでのような高い意識は感じ取られなくなったということでこの結論になった。
ここでのポイントは、センター長のこのこの発言です。
Mさんは業績がA、コンピテンシーがBでB+だけれど、僕はコンピテンシーがC。総合評価はBだと思う。
厳しいようだけれど、彼はそれだけのことをしたと思っている。

この発言は『ハロー効果』が顕著に出ているセリフだと思いました。
ハロー効果とは?
何か1つの特徴や、1つの出来事に大きく印象づけられ、他の評価に影響を及ぼしてしまう現象
ハロー効果は、Mさんとセンター長のような直属関係にない場合に非常に起こりやすい現象です。普段からそこまで関わりのない関係であるということは、その人を評価するための材料が乏しいということ。つまり、大きなネガティブ材料やポジティブ材料が、その人の評価を大きく形作ってしまう。これはごくごく当たり前の心理なのです。
今回の例はネガティブ・ハロー効果であり、もちろんその逆でポジティブ・ハロー効果もあります。
評価者は、上期なら上期、年間なら年間、これらの定められた期間内で起こったあらゆる評価材料を、しっかりと見比べて、整理して評価していく必要があります。1つの出来事や1つの特徴で、その人を評価してしまわないように十分注意しましょう。
見事に自分の首を絞める上司
議題は次に進み、本社員区分の評価分布の話に。
本社員については、B+からAに1人、BからB-に1人を移動させなければいけない状況だった。

元相方のSMgrが口を開いた。

Hさんは私のチームのリーダーとして、今年に入って最高の生産性まで高めてくれており、目に見える業績結果をしっかりと出しています。なによりコンピテンシーが成長しています。今までは高圧的で、トップダウンで部下たちを引っ張る支配型リーダーでしたが、一人ひとりに真剣に向き合い、モチベーションを高めていくことで結果を出すスタイルに挑戦しています。物言いも柔らかくなりました。

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私もそう思います。このセンターに来て、私が1番課題と思っていたのは、Hさんの支配型リーダーシップでした。Mgrの私にさえ高圧的な態度で、一時は私も辛い時期がありましたが、ここ最近は人が変わったようです。実際、私も彼と話していると、口から出てくるのはこれまでと違う、思いやりのある、リーダーとしての言葉です。
Hさんは、私が最も苦手なタイプだった。そして同時に正反対のタイプだった。私は異動してきたばかりで、彼に対してアドバイスをしてあげられるほど信頼関係が構築できておらず、これまではただただリーダーとしての『見本』を見せることしかできていなかった。そんな中彼は、自分で自分の課題に気づき、自ら改善しようとして、実際に改善できた。
しかしここで反対意見が。

口を開いたのはSMgrの直属の上司である副センター長だった。

読者のみなさんは背景が分からないので、この副センター長の意見がごもっともだと思うかもしれません。
しかし、この評価は実は『的外れ』な評価でした。
副センター長が言っていることは確かに、事実として、他県のとあるセンターでは当たり前のスキル、アクションのようです。しかしセンター長曰く、中には今のHさんのやり方(庶務に全て任せる)を『正』としているセンターもあると。つまり、全国レベルで『正解』が決まっていない以上、Hさんの評価が悪いとは絶対に言うことができないということです。
そしてさらに、驚愕の事実が発覚。

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Hさんに対して、この課題を投げかけていますか?
あのセンターでは普通だから。

寒気がした。
副センター長は、何を基準に評価しているのだろうか・・・。
ポイント
自分が当たり前だと思うことを『正』として、他人を評価しては絶対にしてはいけない。仮にその課題が全国的に当たり前のことだとしても、本人に対して『課題である』と伝えていない状態で、本人が弱みに気づいていない状態で、『できていない』という評価することは絶対にしてはいけない。
副センター長の快進撃はここでは終わらなかった。
なので、HさんはAではないと思います。良い評価はあげられない。

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ここにいるマネジメントメンバー全員、誰一人としてHさんにその弱み・課題を与えていない以上、アドバイスもしていない以上、Hさんはできなくて当たり前です。それを『できていない』として低評価をつけるのは違うと思います。
今回の課題の件は、Hさんをそのレベルまで持っていこうとアプローチしなかった『副センター長への評価』のお話ではないですか?
下期の課題としてHさんには指導していってください。それで次回、下期の評価で『できていない』と評価する分には文句はありません。

Hさんの上司であり、副センター長の部下であるSMgrは私の隣の席で呆れていた。
その理由は、この的外れな評価をした副センター長はアドバイスはおろか、用事がない限り現場に1度たりとも顔を出さず、ずっと事務所でPC作業をし、安全靴を履かずにスリッパで動き回り、午後は大あくびを繰り返し、時にはボリボリとスナック菓子を食べながら仕事をしているような人だからだ。
評価基準を捻じ曲げるセンター長
議題は次に進み、本社員区分で、BからB-に1人移動させる話に。

各Mgrは頭を悩ませながら必死に考え、2人の名前が挙がった。
ここで問題発言が生まれる。
候補者②は業績がB、コンピテンシーがA、総合評価がB。
この場合、コンピテンシーがAの候補者②の方が秀でているという判断に私はなるのですが、みなさんも同意見ですよね?

私と元相方のSMgr以外の5名のマネジメントメンバーは首を縦に振っていた。
みなさん、よろしいですか?

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そこを比較対象にしてはいけないと思います。
会社の評価基準は業績50%、コンピテンシー50%で評価を行うという決まりですよね。確かに結果よりも過程や取り組む姿勢を大事にしたい気持ちはありますが、5対5の基準を4対6に我々の判断で変えるようなことがあってはいけません。
どちらがB-に値する仕事ぶりだったのか、しっかり意見をぶつけ合って議論し、決定しましょう。
ポイント
評価基準を変えることはしてはいけない
評価の目的
アルバイトの評価分布も、本社員の評価分布も整った。
時計の短針は真下を指していて、終わってみれば評価会議は予定していた時間から1時間延長し、2時間半行われていた。
いや~。評価をつけるだけでこんなに時間がかかるとは思わなかったよ。



私はそんなセンター長と周りのマネジメントメンバーの会話を聞いて残念だった。
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私は評価会議は1時間半で終わるとは思っていませんでした。評価会議は本来、今日ぐらいの時間を費やして行うべきことだと思っています。みなさんがそう思わないのと、私がそう思う理由の決定的な違いは、評価の目的を正しく理解できているかどうかだと思っています。評価の目的は『評価をつけること』ではありません。『評価をつけること』は部下たちの成長のための手段であり、目的ではないです。確かに『評価をつけるだけ』なら1時間半で十分だと思います。
でもそうではありません。
評価の目的は人材育成です。
ここで働く人たち(部下たち)の働きぶりに関して、マネジメントメンバー全員が集まって、真剣に、それぞれの意見、考えをぶつけ合う場所は半年に1回。ここしかありません。この意見交換の機会は人材育成のためには非常に重要です。『評価をつける』という作業を通して、私たちは部下の成長のために今後どうしていくべきかを話し合い、それを部下たちにフィードバックし、アドバイスし、成長に繋げていくのです。
それを忘れないでほしいと思います。
よろしくお願いします。
人を育てたいという気持ち
評価基準、ハロー効果、副センター長の的外れな発言、色々ありましたが、今回の記事でみんさんに1番伝えたいことは、最後にマネジメントメンバー全員に伝えた言葉です。
『評価の目的は?』
ぜひ今一度立ち止まって考えてみましょう。
『人を育てたい』という気持ちが、
あるか。
ないか。