みんさんは、クレームを言ったことがありますか?
みなさんは、クレームを言われたことがありますか?
では、クレームと聞いてどんなイメージを持ちますか?
ほとんどの人が『怖い』とか、『面倒くさい』といったネガティブな感情を抱くと思います。
私は小売業として8年間、店舗、つまり小売りの最前線に立ってきたので、1日何千人という単位でお客様と顔を合わせていました。そしてその8年間のうち3年間は責任ある立場であったため、お客様からのクレームを自らが対応をし、辛い思いをすることが多々ありました。
しかしとある日の社内研修で、今回お話する内容を知った時、今まで持っていたネガティブなイメージからポジティブなイメージに劇的に変わりました。
今回は『クレームの正体』というテーマで、今日この瞬間からクレームに対するイメージがガラリと変わるお話をしていきます。
クレームとは?
さっそくクレームの正体に迫っていきます。
みなさんはご存じでしたか?
クレーム対応の基本として、お客様の前ではクレームという言葉を絶対に使用してはいけません。
さてその理由はなぜでしょうか?
実はここにクレームの正体のヒントが隠されています。
では、いきなり答えになりますが、この図を見てください。

クレームとは、『お客様の要望』+『負の感情』で構成されています。
つまり、本来は『要望』であるはずのことが、嫌な思いをしたことによって『負の感情』が加わり、クレームとなるのです。
お客様はクレームを言いたいわけではなく、本当はただ単に要望をしているだけ。だからお客様の前でクレームというフレーズは絶対に使ってはいけない。お客様の前では『ご意見』や『ご要望』を使用します。
『要望』が『クレーム』に
小売業を例にして考えてみます。
要望
「あの商品を品ぞろえしてほしい」
「早く会計を済ませたい」
「キレイなトイレを使いたい」
「気持ちよく買い物がしたい」
要望だけを抜き出してみると、とても透き通った前向きでポジティブな声に感じますね。
しかしここに負の感情が加わると一気にネガティブになります。
クレーム
「あの商品を品ぞろえしてほしい」
+
近くの店員にお願いしたけど、本部の指示がないとできないと否定された。
「早く会計を済ませたい」
+
自分は2番目に並んでいたのに、応援に来たレジ店員は4番目に並んでいる客を案内した。
「キレイなトイレを使いたい」
+
いつも汚くて臭いし、時々見かける清掃スタッフの態度も悪い。
「気持ちよく買い物がしたい」
+
店員が品出しをしている辺りの商品を眺めたいのに、店員がこちらに気づかず品出しに夢中になっている。
負の感情が加わると、先ほどのポジティブなイメージは一気にネガティブになります。
これはほんの一部の例にすぎませんが、みなさん自身も客の立場でお店やサービスを利用する時、つい負の感情が芽生えてしまうことがたくさんあると思います。人間なので誰でもそうです。
繰り返しになりますが、『クレームの正体』は『要望』+『負の感情』です。ここまでくれば、私の言いたいことが分かったきた方も多いのではないでしょうか。
『クレーム』を『要望』に
先ほどは『要望』が『クレーム』になる理由を例を出して紹介しましたが、今回は逆の考え方です。
みなさん、小学4年生、5年生くらいの時に習う『移項』を覚えていますか?
イコールを跨いで数字が移動されるとあら不思議。プラスはマイナスに、掛け算は割り算に変わりますよね。
先ほどのクレームの構造でも、同じことをしてみましょう。

こういった構造に変わります。
つまり、クレームの正体はもともとは『お客様の要望』だということです。
ちなみにみなさんがここで気になるのは、負の感情を取り除く方法だと思います。しかしこの記事のテーマから外れてしまうので今回はそこを深堀りせず、後日別な記事で紹介したいと思います。ちなみに負の感情を取り除くためには『何となく対応するだけ』では絶対に無理で、『技術』が必要です。
クレームの正体
まとめになります。
『クレーム』とは『お客様の要望』+『負の感情』で構成されていて、『負の感情』をゆっくりと、慎重に、丁寧に取り除いていくことができれば、残るものは『お客様の要望』つまり『お客様の声』です。
『お客様の声』というものは簡単に聞き出すことはできないものです。お客様の立場で買い物やサービスを受けた時、客側にその店や従業員の対応などを評価する義務は一切ありません。つまり、『お客様の声』は非常に貴重なもの。もっと価値を高める表現をすれば『宝』です。
会社にとって『お客様の声』は『宝』なのです。
大事なことなのでもう一度言います。
『お客様の声』というものは簡単に聞き出すことはできないものです。
各企業、お店、一所懸命に『お客様の声』を得ようと努力しています。会計時にレシートと一緒にアンケート用紙をお渡ししたり、レシートにQRコードがついていて帰ってからケータイで回答できたり、飲食店ではテーブルの上の隅っこの調味料が置いてある場所にアンケート用紙を用意したり、お店から出るお客様を呼び止めて口頭でアンケートを実施したり。
しかし、これだけやってようやく得られた『お客様の声』も、景品目当てで適当に回答されたり、早く済ませたいからと言って質問の意味を正確に理解せずに回答されたり、正直で率直な声でないことが多いのです。
では、それに比べて対面で直接的に要望を伝えてくれるクレームはどうでしょうか。嫌な思いをして湧き出た『負の感情』は付きまとうものの、ここまで正直で率直な声はありません。
「嫌な思いをしたからこそ、口に出すのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。相手が傷つくであろうことをわざわざ言うことは、お客様にとっても気持ちの良いことではなく、ほとんどのお客様は嫌な思いをしても感情を押し殺して、何も言わずお店を後にします。
『クレーム』にネガティブなイメージを持っていたみなさんは、この記事を読んで『クレームの正体』を知り、『お客様の声』が貴重な『宝』だと知り、ポジティブなイメージに変わったと思います。
とはいえ、負の感情をぶつけられることは辛いですよね。分かります。
でも最低限、この仕組み、考え方が分かっていれば、負う傷も少なくすむのではないでしょうか。