言葉で誤解が生じて、相手の心を傷つけてしまうことなんて、私たち人間の心が共通でない以上、物事や言葉の捉え方が共通でない以上、どんなに経験の豊富な優秀なリーダーでも、どんなに人生経験豊富な人でもある話です。 私たちは心の内にある思いを全ては言葉にしません。一言で伝える時もあれば、言葉と言葉を紡いでたくさんの思いを表に出すこともある。つまり、自分が思う『相手に必要であろう部分』だけを言葉にして伝える。その『必要であろう部分』を事前に全て分かる人なんてこの世には1人もいない。その答えは相手が持っているから。
今回の記事は、私が1人の女性の部下の心を傷つけて、泣かせてしまった実体験です。Mgrであるガッキー、現場リーダー、女性の部下、登場する3人がそれぞれ選んだ『相手に必要であろう部分』が足りず、誤解が生じてしまいました。この記事を読めば、伝えることの難しさを理解でき、『どんなに優秀なリーダーでも、どんなに人生経験豊富な人でも、人の心を傷つけてしまうことがある』ということを分かっていただけると思います。そして最後に、相手の心に傷をつけないために私たちがすべきことが分かります。
15日の朝
朝の事務所にて。
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法律で年間5日以上の取得が義務になったことで、私は年次の取得状況には敏感になっていました。

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まだあと5ヵ月ありますから、少ない人もたくさんある人も計画的に取得していきましょう。
20日の午後

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では提出用にファイルに落とし込む必要があるので、いつものそこのPCで打ち込みをして、終わったら教えてください。

数分後・・・。

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ん~。見ての通り、この日が年次が重なってしまっていて人数が足りないですね。でも逆に人数が多い日もあるので振出・振休で交換ができるメンバーがいるかどうか探してみてください。
21日の午後
振出・振休の了解を得られたので、問題は解決ですね。

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他チームに迷惑をかけたくないので、自チーム内で調整ができて良かったです。
あとは私がスケジュール登録をしておきますので。ありがとうございました。
22日の午前中
翌日。
私はスケジュール登録をしているととある異変に気付き、リーダーに電話で確認をしました。
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○○さんなのですが、本来は日曜日は出勤のはずなのに、提出してもらったファイルでは指定休になっているんです。これは打ち間違いでしょうか?
・・・。あ、その日は欠勤だそうです。

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先月ガッキーさんがメンバー全員の年次残日数の表を共有してくださって、年次を使っていない人には取得の推奨をして、残日数が少ない人には計画的に使用するように伝えるよう、指示を受けましたよね。もちろん○○さんにも伝えました。
○○さんは残りが2日しかなかったので、年次はいざという時のためにとっておいて「今回は欠勤で良いから休みたい」とのことでした。

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22日の午後

現場作業を終えたリーダーは疲れた顔で私のところに来ました。
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それと、先日○○さんに残日数を伝えて、これから計画的に使用するように注意をした時に、「年次がなくなってしまったら仕方ないから欠勤にするしかないよね」とも言っていまして・・・。

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もちろん年次も無限にあるわけではないですから、いつかはなくなってしまう。でも休みたい時が出てきてしまう。仕方のないことです。それは仕方のないことですが、だからと言って簡単に欠勤の答えに行き着くのはダメですね。それが当たり前のようになってしまっては、雇う側としてはコントロールができなくなってしまいますから。

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仮にこの日を振休として、その前後で振出をつくろうとすると・・・。
あ~。5連勤になりますね。以前も○○さんは「5連勤は厳しい」と言っていました。主婦ですし、体力が持たないと言っていました。

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年次を使う場面だけど残日数が少ないので取っておきたい。振出・振休のルールも5連勤になるので避けたい。だから欠勤にする。
OKです。もちろん私も欠勤を絶対に許さないわけではないですし、プライベートを大切にしてほしいですから、許可します。最初から許可するつもりでしたが。
ただ、リーダーの話を聞くと欠勤に対する考え方が少し甘い気がするので、そこは伝えなければいけません。
それからリーダーも、「欠勤で」と言われた時には、今私たちがしたような会話を現場レベルでしなければいけませんよ。簡単に「はい。」で受け取ってはいけません。また、もっと大事なことは、私にシフトを提出する時点で相談しなければいけません。

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とりあえず明日、○○さんへは今のような話をリーダーがしてください。
○○さんはちょっと気が強いですけど、リーダーから言えますか?

リーダーはちょっと不安そうに答えた。
23日の朝礼の後

いつものように朝礼を終えて散り散りになるメンバーたち。

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声をかけてきたのは欠勤を希望していた○○さんでした。
神妙そうな面持ちで私の顔を見ていた。

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今回、○○さんが欠勤の相談に至った経緯、事情も分かりますし、私もそれをダメと言うつもりもありません。
ただし、『年次がなくなったら欠勤』ということが当たり前になってはいけないので、そこだけ確認というか、お願いをしたかったんです。
今年は入社1年目で付与される年次の数も少なくて難しかったでしょうけど、来年はもう少し増えますし、これから計画的に使用できるようにしていきましょう。

24日の朝礼後

いつものように朝礼を終えて散り散りになるメンバーたち。

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リーダーもちょっと来てください。
声をかけてきたのはまたしても○○さん。
直感で、今回はリーダーも含めて3人で話した方が良いと思い、リーダーも呼び止めました。


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私は仕事は仕事、プライベートはプライベート。きっちりケジメをつけてやっています。仕事を甘く見たことは今までありません。
ちょっと・・・、泣きたくなってきました。

○○さんの目には涙が。
自分の感情を押し殺しているような。
悔しさを我慢するような涙でした。
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辛い思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。
私は深々と頭を下げた。

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正直にお話しすると、先日リーダーが残日数を伝えた時に○○さんが「年次がなくなってしまったら仕方ないから欠勤にするしかないよね」と言っていたと聞いて心配になりました。もしかしたら○○さんの頭の中で、欠勤にすることができることが当たり前になってしまっているのではないかと。
言葉の表現の難しさだと思います。
今は私もできるだけリーダーに色々な仕事をお願いしていますから、○○さんはリーダーに言う。リーダーは私に言う。その時に伝言ゲームになってしまって、言葉の表現が変わってしまったのだと思います。

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私とリーダーのコミュニケーション、私の言葉の受け取り方に問題があり、誤解してしまったことは謝ります。
申し訳ありませんでした。

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「当たり前にならないようにだけお願いします」や「計画的に年次は取得してください」とね。
なぜかと言うと、Mgrとして私は認めますが、周りのメンバーがそれを認めるかは別です。このチームはみんな理解のある人で、○○さんが育児を頑張っていることもみなさん知っています。だから暖かくフォローしてくれています。でも事実として、他のチームはこんな暖かい人ばかりではありません。だから、仕方なく欠勤をお願いする時には、リーダーにも、Mgrの私にも、周りのメンバーにも、相談して、納得してもらって、『欠勤が良いことではないことは分かっているけど・・・ごめんなさい』というような思いを示していかなければいけません。
私はMgrとして、それが○○さんにとって当たり前にならないように、チームとして当たり前にならないように、伝えることは伝えなければいけません。

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申し訳ありませんでした。

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それから、リーダーも、私も、○○さんも人間ですから、本当に自分が伝えたかったことが一言で伝わるとは思わないようにしましょう。今回のように誤解が生じたら、こうやって話し合いましょう。
申し訳ありませんでした。


伝えるべき言葉を心の中から選ぶ力
私はリーダーの「○○さんが、年次がなくなってしまったら仕方ないから欠勤にするしかないよね。と言っていました」という言葉を聞いて、正直、○○さんは『欠勤が本来はいけないこと』という認識が薄いと感じました。甘いと思いました。これは事実です。
しかし、もしも○○さんがリーダーにこう言ったとしたらどうでしょうか。
「リーダー。相談なのですが、年次がなくなってしまいそうで・・・。でも休みたいのですが、欠勤は良くないですよね。」
もしもこう言ったのであれば、リーダーは私に「○○さんが、欠勤はダメですよね・・・と悩んでいました。」と伝えたかもしれません。
もしもリーダーが○○さんにこう言ったとしたらどうでしょうか・・・。
もしも私が○○さんにこう言ったら・・・。
もしも・・・。
あの言葉を伝えていたら。
あの思いまで言葉にしていたら。
あの表現ではなくこの表現を選んでいたら。
自分の心が傷ついて、誰かの心を傷つけて、言葉のやり取りを思い出して、反省して、そんな経験が私たちを成長させてくれます。
相手の心を傷つけない方法なんてありません。
相手の心に傷をつけたくないのなら、言葉を使わないことしか方法はありません。
相手の心に傷をつけてしまう回数を減らす方法はあります。
経験から学び、気づきを得ること。
日常的に、意識的に言葉を選ぶこと。