「共感します。」
よく耳にする言葉ですよね。
ところでみなさん、共感の意味を分かって使っていますか?
普段みなさんが何気なく使っている『共感』は、実は信頼関係を築くための非常に重要な『スキル』なのです。
本日は『共感』の意味、そしてそれに似た言葉の『同感』の意味、この2つの違いを明確にして、リーダーに共感力が必要な理由を私の実体験を交えながら解説していきたいと思います。
同感とは
共感の意味を確認する前に、まずは同感の意味を解説します。
同感とは?
相手と同じ気持ち・考えだということ
冒頭で「共感します。」というセリフが出てきました。
みなさんも自分がこのセリフを使った時のことを思い出してほしいのですが、本当は「同感です。」だったのではないでしょうか。
ここまで来るといよいよ、『共感』の意味が気になってきますね。
共感とは
次は共感です。
同感は『相手と同じ気持ち・考えだということ』でしたが、『共感』はどうでしょうか。
共感とは?
相手の気持ち・考えに理解を示すこと
どうでしょうか。
ではここでもう一度聞いてみます。
冒頭で出てきた「共感します。」というセリフですが、本当は「同感です。」だったのではないでしょうか。
多くの人が共感とは『相手と同じ気持ち・考えだということ』だと勘違いしています。
そして「共感と同感の違いを教えて?」と聞かれた時に言葉に詰まります。
共感と同感の違い
同感とは『相手と同じ気持ち・考えだということ』ですから、この世に価値観が完全に同じの人は1人もいないことを考えれば、仕事でもプライベートでも「同感です。」と言えるようなシチュエーションはそれほど多くはないはずです。特に仕事の場で考えると、上司や部下、同僚、時にはお客様に対して「何でそういう考えになるかな・・・。」や「俺はそうは思わないよ。」と言いたくなる機会は非常に多いのではないでしょうか。
共感は『相手の気持ち・考えに理解を示すこと』です。同感との大きな違いは『自然に生まれる言葉』ではないということです。同感は『相手の気持ち・考え』と『自分の気持ち・考え』が同じ時に自然に『同感』という言葉が生まれるのに対して、共感は『相手の気持ち・考え』と『自分の気持ち・考え』が違う時に、意図的に『共感』という言葉を生み出す必要があるのです。
つまりまとめると、『共感』は『スキル』であり、誰でも簡単にできることではありません。


この説明を聞いて、同感と共感の違いが明確になったのではないでしょうか。
リーダーに共感力が必要な理由
記事の冒頭で、共感がリーダーにとって必須スキルになると書きました。
その理由は『信頼関係の構築』です。
チームで仕事をする時、仲間同士の信頼関係はなくてはならないものですよね。上司と部下の関係であれば尚更です。
でもそれは誰でも分かっていること。
みなさんが知りたいのは『信頼関係の必要性』ではなく『信頼関係の築き方』だと思います。
信頼関係の築き方には様々な手段がありますが、その中の1つが今回のテーマである『共感』なのです。
- 生まれた国(人種)
- 職場での立場
- 年齢
- 性別
- その時感じた気持ち
- 考え
- 価値観
信頼関係を構築するためには『相手を受け入れる』ことが重要なのですが、単に『相手』と言ってもたくさんあります。そしてこういったたくさんの『違い』の多くは、言葉になって表に出てきて、私たちの耳に入ってきます。この違い(相手)を受け入れる手段が『共感』です。そして『受け入れる』という表現は『相手を尊重する』という表現に変換ができます。(完全なイコールではありませんが)
共感によってチームのメンバー(同僚・部下・上司)の『違い』を積極的に受け入れて相手を尊重することができれば、信頼関係を築き上げることができます。その強固な信頼関係の土台があれば、チームは最大限の力を発揮することができます。
共感力の身に付け方
次に共感力を身に付けるためにリーダーが持つべき価値観(考え方)を3つ紹介します。
違うのは当たり前
共感力を身に付けるためにはまず、『自分の気持ち・考えと、相手の気持ち・考えが違うのは当たり前のことだ』という価値観を持つことからスタートです。
この『自分の気持ち・考えと、相手の気持ち・考えが違うのは当たり前のことだ』という価値観を持つことができれば、まずほとんどの人は相手を尊重するための『心の余裕』を手に入れることができるはずです。
違いを認めること
次は『違いを認めること』です。
組織においては必ず統一しなければいけない目的(ミッション)・価値観(企業カルチャー)があります。○○リーダーや○○Mgr、部長、店長など、役職がついて上の立場になればなるほど、組織の共通目的や共通の価値観を意識します。この組織の目的や価値観を統一させることと同じように、ついつい周り人の気持ちや考えを自分と同じ気持ちや考えに統一したくなってしまいます。多くの新任リーダーはこの落とし穴にハマって信頼関係を崩してしまい失敗します。
最低限、共通認識にしなければいけないことは統一する必要があります。しかしそれ以外の違いは積極的に認め、受け入れましょう。
違いこそが変化を生み、変化が成長を促します。
自分が意見を持たない
最後に紹介する方法はかなり難しことなのですが、このマインドを鍛えることができると無敵です。
それは、『自分が意見を持たないこと』です。
注意点は、言葉の通り『意見を持たない』のではなく、『持っているけど一時的に捨てる』ということです。会話の中で相手が気持ちや考えを主張している時だけ自分の頭の中を真っ白にします。
多くの人が『相手に反論された』という経験があると思いますが、私はこのマインドを身に付けてから『反論された』と感じることはなくなり、相手に共感できるようになりました。自分が意見を持っていないと、相手はあくまでも『意見を言っただけ』になります。自分が意見を持っているから『反論』というネガティブに感じられる言葉が生まれるのです。
具体例
共感に関する知識が深まったところで、私のチームマネジメントの実体験を通して共感の例を紹介します。
これはあくまで1つの例ではありますが、マネジメントに置き換えて考えることで、共感とはいったいどのようなことなのか、どれだけの効果があるのかを分かってもらえると思います。
それはとある日の出来事。
私の担当する作業チームのメンバーの、派遣の岩間さん(仮名)。季節の変わり目だったこともあり、チームに加わって僅か3日で、体調不良により2日連続で欠勤してしまいました。岩間さんは次の日も出勤予定だったので、私は体調が回復したのか悪化したのか、出勤できそうか休みにするか、確認の電話を午後14:00にするようにお願いしていました。
14:00
約束通り岩間さんから私に電話があり、「回復してきているので明日は出勤できます」と連絡を受けました。
ここ2日間1人少ない中でチームのメンバーたち(部下)は頑張ってくれていたし、明日も出勤できるかできないか心配している人が多いと思い、私は現場リーダーにすぐに電話で連絡を入れました。
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岩間さんから連絡は来ましたか!?

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とりあえず体調は良くなっていて、明日は問題なく出勤できるようです。

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私は岩間さんの件を伝え、それにより変更になる明日のスケジュールについて4分間話し(このあと起こる一件の後でこの時に何分間電話したか履歴を見た)、電話を切りました。
15:30

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事務所で黙々と業務をしていた私のところに、退勤時間を迎えた女性の部下がやってきました。

私のところにやってきた女性の部下は、自分の意見を正直に言える(自分では『つい言ってしまう』と弱みだと感じてる)人。周りにいる関係のない人たちのことなんてお構いなしで、顔を真っ赤にして強気に私にそう言いました。

この時の女性の部下と私の気持ち・考えをそれぞれ整理しましょう。
女性の部下
・忙しい時にリーダーに電話してほしくない
・予定のことは後でも良い
・作業が終わらない
ガッキー
・忙しい時でもリーダーとの電話は必要
・予定のことは今確認しなければいけない
・作業が終わらなくても問題ない
完全に真逆でした。(=同感ではない)
”共感と同感の違い”でも解説した通り、共感は同感と違って自然には生まれるものではなく生み出すものです。つまりここで、私が相手に共感をするのかしないのか、2つの選択肢が生まれます。そしてこの選択は、信頼関係を構築できるかできないかの分岐点になります。
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私の選択はもちろん『共感』です。
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これからは忙しい時間に電話をすることは極力避けるようにしますね。
ただ、Kさんはみなさんと違って1人の作業員ではなくて、チームを管理するリーダーの役割がありますから、どんなに忙しい時だとしても、その時に必要だと判断されるコミュニケーションは少なからずあります。今回の岩間さんの件も、私なりにみなさんにできるだけ早く伝えて安心させたかったから、すぐにあの時間に電話しました。
時間はできるだけ短くしますから、その点は理解してほしいです。
あ、岩間さんの件も電話で伝えていたんですか?
私は聞いていませんよ。


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岩間さんのことをみんなさんにすぐに伝えたくて電話したんです。明日のスケジュールの件はついででした。
16:00

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ごめんなさい。


『岩間さんの件+明日の予定で電話した』という真実がちゃんと伝わっていればあんなに揉めないよな・・・。
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大丈夫ですよ。
しかし、今回の件は今日中に、いや、すぐに伝えてほしかった連絡です。これから同じようなことが起きないようにどうしますか?
まとめ
いかがだったでしょうか。
女性の部下の気持ち・考えと、私の気持ち・考えには食い違いがありました。私は自分の意見を投げ捨てて、相手が感じた気持ちに対して向き合い、謝罪をしました。考えを受け入れ、具体的に何時なら電話をしても良いか確認をしました。ではもしもその時に私が謝ることをせずにすぐに自分の意見を言い返していたら、相手はどう思うでしょうか。きっと『自分の気持ちを分かってくれないのか』と思ったはずです。この感情がこの先も何度か続いていくと、『自分の気持ちを分かってくれない』という気持ちから『分かってもらえないなら言わない』という気持ちに少しずつ変わってしまいます。これはつまり信頼関係の崩壊を意味します。
また、最後のKリーダーへの言葉。「現場が忙しかったんですもんね」も同じく共感の言葉です。正直な気持ちを言えば、忙しさに負けて大切な連絡事項を伝え忘れるなんてリーダー失格だと思います。謝るのではなくてこれから同じことが起きないようにどのように対策するかを口にしてほしかったです。しかし、その問題はその問題。Kさんの「ごめんなさい」という気持ちとは分けて考えてあげる必要があります。相手が申し訳ない・・・と思っているのなら、その気持ちに寄り添ってあげることが共感するということです。
誰だって、相手が自分と違う気持ち・考えだと分かれば反論したくなると思います。現実問題としてこの世界にはそんな場面が溢れかえっています。しかしそこで、『違いがあることは当たり前のことだ』という前提を持って、心の余裕を作って、共感し、相手の気持ち・考えを受け入れましょう。相手を尊重できる人になりましょう。
信頼関係のベースの上に成り立つチームでの仕事において、『共感』は非常に重要なスキルです。
『共感力』を鍛えて、素晴らしいリーダーになってください。