マネジメント メインコンテンツ

PDCAサイクルは計画が肝心【実例を交えて解説】

PDCAサイクルは社会人なら誰しも1度は聞いたことのある言葉だと思います。そしてほとんどの人がPDCAサイクルを意識しながら、日々様々な業務にあたっていると思います。

しかしそんなPDCAサイクルはメジャーな手法だからこそ、みんな知っていることだから大丈夫『だろう』、自然に実践できているはずだから問題ない『だろう』、つまり『できて当たり前』という頭になってしまっている人、もしくはP・D・C・Aそれぞれの役割を正しく理解できていない人が多く、上手くサイクルが回せない失敗事例が意外と多いのではないでしょうか。

その失敗事例の多くは、Plan(計画)段階に原因があります。

本記事では私の事業所での失敗事例を交えて『PDCAサイクルはPlan(計画)が肝心』というテーマで、PDCAサイクルを上手に回すコツを解説します。

PDCAサイクルとは?

そもそもPDCAサイクルとは何か?

それぞれのアルファベットの意味、役割を確認していきましょう。

PDCAサイクル

P(Plan)・・・計画

D(Do)・・・実行

C(Check)・・・評価

A(Action) ・・・改善

・Plan(計画) 『タスクの整理』『手段の整理』

目標達成のための具体的なタスク(課題)に対して、これからどのような行動をとっていくか、つまり手段を考える段階です。重要なポイントは実現可能な手段かどうかで、それに加えてここから更に、優先度の高い順に整理したり、今後のスケジューリングをしていきます。

・Do(実行) 『計画通りに実行』『記録を残す』

実行は特に何も考えずにできる工程のように感じますが、計画した通りに実行に移せるかどうかは非常に重要です。そして何より大事なことは、次の評価の工程で評価が行えるようにきちんと記録に残すことです。できるだけ数値データとして残し、実行に移す中で浮上する新たな課題などはメモを取っておくことが大切です。

・Check(評価) 『進捗の確認』『結果の分析』

まずは計画通りに実行に移せているのかどうかの確認をします。数値で測れるものであれば数値を根拠に進捗状況や達成度を確認し、良ければ良い理由が何なのか。悪ければ悪い理由は何なのか。次の改善の工程でタスクとして明確化、整理しやすいように詳細な結果分析をします。

・Action(改善) 『計画の精度を上げる』『判断』

評価の工程で分析した結果をもとに、今後どの部分をどのように改善して計画をし直す必要があるかを考えます。『計画の精度を上げる』とイメージすると良いかもしれません。またこの段階で場合によっては、中止、保留などの判断が必要になるケースもあります。

このようなPDCAサイクルの基本は、ほとんどの方が既に知っている内容だと思います。

ここから本記事のメインテーマに入ります。

Plan(計画)段階の落とし穴

導入部分で『失敗事例の多くは、Plan(計画)段階に原因がある』と書きましたが、具体的にはどのようなことが原因で失敗を招いてしまうのでしょうか。

結論から言いますと、下記の2つの不備が失敗を招きます。

ごくごく当たり前のことのように感じるかと思いますが、ごくごく当たり前のことができていないことが分からないくらい、PDCAサイクルを正しく理解できていない人が多いという事実があります。

PDCAサイクルは言葉がひとり歩きしているのです。

計画の不備

  • 実現可能な手段が計画されていない
  • 評価の時期が計画されていない

・実現可能な手段が計画されていない

先ほどのPlan(計画)の説明でも『実現可能な手段かどうか』がこの工程でのポイントの1つだと解説しました。後で実例を出して解説をしますが、このポイントを意識できていない議論では、多くの場合が『理想論』をぶつけ合います。極端な例を出せば、これまで1日3件しかお客様宅を訪問できていなかった営業が1日10件訪問するために、これまでの電車移動から車移動に。いや車でも遅い。ならばヘリコプターで。という手段を考えるようなイメージです。今後PDCAサイクルを回していけば必ず計画の精度を上げる工程(見直しの工程)は回ってくるので、初期段階では本当に実現可能な、ある程度ハードルの低い目標・手段を設定するべきと言えます。(低すぎてもダメですが)

・評価の時期が計画されていない

私の経験上、この不備は本当に多いです。計画段階ではタスクの整理や手段の設定に焦点がビシッと合ってしまい、今後のスケジュールを決めずに実行に移してしまうケースが多々あります。実行に移す前に、計画段階で必ず、『いつ評価の機会を設けるのか』までスケジューリングしましょう。スパンは1日単位の場合もあれば、1週間単位、月単位、四半期単位もあり得ます。このように評価の時期をスケジューリングできていないと、実行に移したはいいものの他の業務などに埋もれてしまい、結果、PDCAサイクルの存在がスーッと消えてなくなります。

一言でまとめてしまえば、『スタートが肝心だ!』ということですね。

失敗実例

ここからは私が今身を置いている事業所の失敗事例を、みなさんと一緒に読み進めながら考えていきたいと思います。

職場アンケート調査

私の会社では年に1度、職場アンケート調査があります。全従業員に匿名で20問程度の質問に答えてもらい、『貢献意欲』という言葉で事業所ごとにスコアが出ます。いわゆる従業員満足度ですね。顧客満足度は従業員満足度が高くなければ良くならない。つまり従業員満足度は大木を支える大事な大事な根っこです。

アンケートは7月に実施され、結果は10月に出ます。各事業所はスコアをもとに分析をして、どのような改善をして来年度にスコアアップを目指すのか『アクションプラン』を作成し、実行します。

2019年10月

私は当時物流事業部に異動したばかりで、総菜の仕分け部門のMgrを担当していました。

今年のアンケート結果が出ましたが、全体のスコアは2018年と比較して8%アップでした。
センター長

毎週行っているMgrミーティングの場で、センター長から発表がありました。

全体のスコアはアップしましたが、質問別に見ていくと低い項目がありますので、いくつかピックアップしてアクションプランを作りましょう。3週間後までに本部に提出しなければいけないので、来週までに各チームでアクションプランを考えてきてください。各チームのプランをここでもう一度話し合って、センター全体のプランを決めます。
センター長
ガッキー
分かりました。
了解です。
同僚Mgr

アンケートは基本的には全質問の平均スコアで評価をされます。つまり全体として8%アップしたとはいえ、1つ1つの質問に目を向けていくとスコアが良くない項目があるということです。スコアが悪かった質問をいくつか絞って、事業所ごとにアクションプランを考えることになります。

実際は3つの低スコアの質問に対してそれぞれ1つずつ、合計で3つのアクションプランを考えたのですが、今回の例ではそのうちの1つをみなさんに紹介します。

低スコアだったのは『自分の意見やアイデアは重要視されていると感じる』という質問でした。

1週間後

各チームからアクションプランが提案され、話し合いの結果、『自分の意見やアイデアは重要視されていると感じる』という質問のスコアをアップさせるために『小規模なチームミーティングを定期的に開催し、スタッフの声を聴く機会を設ける』に決まりました。

それではこれで決定として本部に提出します。
センター長

ミーティングは終わり、今日から来年のアンケート調査までの1年間、Mgrたちで決めたこのアクションプラン(本当は3つ作った)を実行していくことになりました。

2020年10月

勘が鋭い読者の方はもう失敗を確信していると思います。

時は経ち、月日は2020年の10月です。

今年のアンケート結果が出ましたが、全体のスコアは2019年と比較して3%アップでした。
センター長

ニコニコする周りのMgrたち。

スコアアップしましたね!!
拍手ですね!!
上司

パチパチパチパチ。(拍手の音)

全体のスコアはアップしましたが、質問別に見ていくと低い項目がありますので、いくつかピックアップしてアクションプランを作りましょう。3週間後までに本部に提出しなければいけないので、来週までに各チームでアクションプランを考えてきてください。各チームのプランをここでもう一度話し合って、センター全体のプランを決めます。
センター長
了解です。
同僚Mgr
違うよな・・・。

私は他のMgrとは違った視点でこの結果を受け止めていました。

私がこの時、この結果を周りのMgrとは違う受け止め方をしていた理由は、みなさんならもう分かると思います。それはこの1年間、『去年考えたアクションプランを、マネジメントチームは実行していない』という事実を、私は知っていたからです。

ガッキー
センター長。

今年の結果を受けてアクションプランを考える前にまずは、去年の振り返りをしてみてはいかがでしょうか。

確かにそうだね。
センター長

ガッキー
私は1年前のアクションプランを全て覚えています。

みなさんはいかがでしょうか。

私は周りのMgrの意識の低さをこの1年間でひしひしと感じていたので、絶対に誰も答えられないであろう厳しい質問を投げかけました。

・・・・・。
センター長
・・・・・。
上司
・・・・・。
同僚Mgr

予想通り、誰も答えられませんでした。

ガッキー
1つは『小規模なチームミーティングを定期的に開催し、スタッフの声を聴く機会を設ける』です。2つ目は・・・。3つ目は・・・。

そうだったね。
センター長

ガッキー
思い出しましたでしょうか。

小規模なミーティングを開いてきたチームはこの1年間どこもありませんよね。唯一、○○Mgrの夜作業のチームは2回開催したのを記憶してます。

ちなみに私の総菜チームは繁忙期を除いて30分のチームミーティングを毎月実施しましたよ。他の2つのアクションプランももちろん実行してきました。私はやってきたという自負があります。これはあくまで自己評価ですが。

今年の詳細を見ると、昨年と全く同じ質問が低スコアになっています。私たちがしっかりとアクションプランを実行できていたら、スコアは3%以上アップしたはずです。私はこの3%の価値は低いと思っています。

今年は去年の失敗を糧にしてしっかりやっていきませんか。

そうだね。ガッキーさんの言う通り。

センター長の私が悪かった。申し訳ない。

センター長

『定期的に』という表現は、1ヵ月1回、半年に1回、1年に1回、人によって捉え方が変わってしまうため、目標としては曖昧すぎます。また、私たちの仕事は1日完結の業務内容なので、チーム全員が一度に手を止めて15分~30分まとまった時間を設けるのは簡単なことではありませんでした。『チームミーティングを開く』というアクションプランは、もちろん実現可能ではあるけれどハードルが高い手段でした。最後に、『進捗確認をいつやるか』という評価の時期を計画せずに実行段階に移ったことで、私以外の周りのMgrたちはアクションプランを作ったことさえも忘れていました。

私はこのアクションプラン作成の担当になっている副センター長に、このうような昨年の反省を踏まえて今年はどのようなことに注意するべきか意見(アドバイス)をしました。

・アクションプランは現場リーダーも交えて決める
⇒去年は意見を各Mgrが吸い上げて、最終的にはMgrたちの意見交換で決定したが、実現可能な手段かどうかは現場リーダーの意見をしっかりと聞かないと判断ができないため。

・計測可能な目標を作る
⇒『定期的に』のような曖昧な表現はしないで、3ヵ月に1回など明確に決めることで計画もし易くなり、評価もできる。

・進捗確認会(評価)の時期を予め決める
⇒実行に移して終わりにならないように、計画段階で進捗確認会の時期を5W1H(だれが、いつ、どこで、なにを、なぜ、どのようにして)で明確に決めておく。

・掲示板を作成して常に意識できる環境を作る
⇒取り組みの期間が長ければ長いほど意識が薄れる傾向が高まる。これは1年という長いスパンの取り組みで特に注意が必要なので、いつでもだれでも見れる場所にスコアやアクションプランを掲示して、意識して取り組んでいけるようにする。

合同ミーティングにて

先ほどのMgrミーティングの2週間後。月に1度のリーダー以上のスタッフが集まるミーティングで、今年のアクションプランが話し合われました。

去年考えたアクションプランもろくにできなかった。できないことを話し合っても意味がない。
リーダー
それはセンター長である私の責任です。申し訳なかった。

今年は去年と同じ失敗をしないように、今日この場でしっかりと計画をする。どうか前向きな意見を出してほしい。

センター長

ミーティングは開始早々、優秀な現場リーダーの厳しい意見で幕が上がり、センター長の謝罪で意見交換が始まるという何とも残念なスタートだった。

しかし、働く環境を今よりも少しでも良くしたいというリーダーたちの気持ちは、しっかりと意見・提案となって議事録に書き足されていき、私が事前にアドバイスした『実現可能な手段か』や『進捗確認会(評価)の時期』、『掲示版の作成』などのポイントも意識され、去年とは比べ物にならないくらいしっかりとした、まるで生き物のように熱を持った計画が出来上がりました。

まだこの段階ではサイクルが回り始める前ですので、ここからが本当の勝負ですが・・・。

スタートが肝心

PDCAサイクルが上手く回らない1番の原因はスタート、つまり『Plan(計画)』にある。本記事でその理由を分かっていただけたと思います。

まずはスタートする前にこれから進むべき方向を決め、走るスピードも決め、道しるべになる目印を設け、中間地点では何をするかを予め計画する。そしてこれらを全員で共通認識にしておくことが非常に重要です。

どんなに素晴らしいスタートを切ったとしても、その後のDCAがきちんとできなければ意味がないのはもちろんですが、計画段階でここまで明確に先を照らしておけば、自ずと取り組みに対する個々の意識は保たれます。

もちろんですがPDCAサイクルについて、この記事で解説されたことが全てではありません。見方によっては『評価が肝心だ!』や『改善だ!』という意見も当然あると思います。(本当にどの工程も抜けていはいけない重要な歯車) 最低限の基礎知識を頭に入れたうえで真剣に取り組み続ければ、それぞれの工程で重要になる項目は自然に気づくことができるはずですので、ぜひ意識して実践してみてください

ただし、計画段階(スタート)はしっかりとね。

  • この記事を書いた人

ガッキー

リーダーシップ / マネジメント / チームづくり / 人材育成について、実体験を交えながらTwitterとブログ、時々YouTubeで発信。 物流部オペレーションMgr ⇐ トレーナー(本部) ⇐ 店舗Mgr

-マネジメント, メインコンテンツ
-, , , ,

© 2023 ガッキーBLOG Powered by AFFINGER5