報告(ほうこく)・連絡(れんらく)・相談(そうだん)は、それぞれの頭の文字をとって『ほうれんそう』というフレーズで使われるケースが多く、社会人のみなさんなら誰しも『報告・連絡・相談』の重要性を、新入社員研修の場や配属先の上司から教わった経験があると思います。
しかし多くの人は『報連相がなぜ重要なのか』は教わって分かっていても、それを『当たり前にできる人を増やす方法』は教わらず、報連相ができない部下がいて悩んでいるリーダーも多いのではないでしょうか。そして多くのリーダーは部下に「報連相をしっかりしろ!」と叱ってしまいます。実はこれは無意味なアプローチです。
本日はそんな悩めるリーダーのみなさんに、まずは報告・連絡・相談の言葉の意味・違いをひとつずつ解説し、これらを当たり前にできる部下を増やす方法を伝授したいと思います。
報告とは
報告とは?
指示・命令に対して、進捗や結果の内容を知らせること
上司と部下の関係性で、報告のシチュエーションは非常に多いです。
・1週間の活動報告を毎週金曜日の18:00までに提出する
・昼休憩前までの作業の進捗状況を12:00に電話で知らせる
・労災事故が発生したので事故報告書を作成して提出する
これらが全て上司から部下に対しての指示・命令ありきの業務だと仮定してですが、いくつか例を挙げてみました。
実は『指示・命令ありきの業務だと仮定して』という部分にヒントがあります。報告は基本的には上司部下などの関係性を問わず、AさんがBさんに指示・命令をしたことに対して『知らせる』ということですので、指示・命令がなかった場合はその『知らせる』という行為は、次に説明する『連絡』の部類に入ることになります。
連絡とは
連絡とは?
報告義務がない情報を知らせること
相手が必要と思われることを知らせること
報告も連絡も、どちらも『情報の行き来』であることには間違いありません。この2つの大きな違いは、その『情報の行き来』を『指示・命令』の下で行うのか『自らの判断』で行うのかという部分です。
例えばですが、あなたが主催で10日の13:00に会議を予定したとします。もしもあなたの都合が合わずに予定を変更せざるを得なくなってしまった場合、あなたは全参加者に予定が変更になったという『情報』を知らせなければいけません。しかしあなたには報告の義務はありません。誰からも「予定が変更になった場合は私に知らせてください」と指示・命令されていないからです。ここであなたがとるべき行動は『連絡』になります。
『報告』と『連絡』の違いを説明できなかった方は、この例を読んでスッキリしたのではないでしょうか。そしてこうして整理ができるようになると、『連絡』のシチュエーションは『報告』のシチュエーションよりも遥かに多いことが分かると思います。
相談とは
相談とは?
抱えている問題や課題に対して他者からアドバイスをもらうこと
今みなさんは『報連相の意味の違いが分からない』や『部下に徹底させたいけど…』といった課題(悩み)を抱えてこの記事を読んでいると思いますが、私とあなたで会話のキャッチボールがないだけで、『他者からアドバイスをもらう』という意味では、これも相談の一種に入りますよね。
相談されることもあれば、自分からすることもある。報告や連絡と違って、みなさんにとっても馴染みのある言葉だと思います。
3つの違いを考察
報告・連絡・相談、それぞれの特徴を簡単に比べてみましょう。
頻度

情報量

難しさ

【報告】
報告は指示・命令により義務が発生するので、自ら判断して情報を知らせる連絡や相談よりもずっと簡単なことです。その代わり相手に正確に分かりやすく情報を知らせなければいけないシチュエーションが多いため情報量は多くなりがちで、説明力は必要になるでしょう。
【連絡】
連絡は指示・命令がなく、自らの判断に迷いが生じることが多いことから、報告よりも難しいと言えます。その反面、連絡はちょっとした情報の知らせが多く情報量は少ないことが多いので、判断さえできてしまえば比較的簡単にできることではあります。
【相談】
相談は他の2つに比べて遥かに難しいことです。情報を知らせるだけではなく、自分の意見や気持ちも伝える必要があり、相手の意見を伺う言葉も選択していかなければいけません。
ここでリーダーが最低限分かっていなければいけないことは、『報告』⇒『連絡』⇒『相談』の順で部下は判断が難しくなるということ。また、少し表現を変えて言い換えると、口を開くことが難しくなるということです。
報連相をできる人を増やす方法
最後に、部下に報連相をしっかりとできるようになってもらうためのアプローチ方法を簡単に紹介します。
これから紹介する方法は全てにおいて、『リーダーが自身がすべきこと』であって、『部下にしてもらうこと』ではありません。つまり、部下が報連相をできない理由のほとんどは、『リーダーに責任がある』ということです。
報告をできるように
報告は指示・命令が前提にあるので、指示・命令が的確でなければ報告も疎かになってしまいます。
1つ目は、期日(締め切り)を決めてあげることです。
例えば2月頭に「この1月度分の点検表を全て確認して押印をして」という指示を部下に出したとして、2月の中旬になっても完了報告がなければ、それは『期日』を決めていないことが全ての原因です。報告を求める時はより具体的に「この1月度分の点検票を ”2月3日までに” 全て確認して押印して」のように期日を指定して指示を出す必要があります。また、期日が近くなったらリマインド(再通知)してあげたり、必要に応じてフォローするなどのマネジメントが伴ってきます。
2つ目は、どのような形式で報告するかを決めてあげることです。
大きく分けると『口頭での報告』と『書面(Excelファイルなど)での報告』の2つに分かれます。書面での報告を望むのであれば、ここからより具体的に、Excelなのか、PowerPointなのか、メールベタ打ちなのか決める必要があります。こちらも報告形式によってはフォローが必要になるので、部下のスキルを正確に把握し、進捗状況を確認する必要があるでしょう。
連絡をできるように
連絡は『報告義務がなく、相手が必要と思われること』を知らせることなので、『リーダー(上司)が求めている情報が何か』を部下が把握できていることがポイントです。
冒頭で紹介した例のような「これから連絡を密にしていこう」というだけのアプローチでは、リーダーが求めている情報が分からないので、いつまで経っても連絡は増えないのです。
こまめな連絡ができる部下を育てるためには、リーダーが会話を増やして『自分はこういった情報があると助かるんだよ』というメッセージを伝え続ける他ありません。部下がリーダーの求める情報を掴むことで、判断基準が構築され、自然と連絡が増えていくでしょう。
相談をできるように
そもそも相談という行為、他人に自分の話を聴いてもらうという行為は、『相手の時間を奪う』ということ。多くの人はこの事実を頭で分かっていないにしても無意識に感じ取っていて、相談することを遠慮してしまうのです。
相手に『相手の時間を奪ってしまうから申し訳ない』という気持ちを抱かせないためには、リーダー自らが傾聴の姿勢を日々示すことが重要です。傾聴は私が推奨しているサーバントリーダーシップの10の特性のひとつで、相手が相談してきた時は自分の仕事を一旦止める、相手の方に身体を向ける、頷きながら、メモを取りながら聴くなど、『いつでもあなたの話を聴くよ』というメッセージを普段から発信し続けることが重要です。
また、定期的に個人面談の機会を設けて『相談できる環境』を意図的に創り出すなどの工夫も求められます。
報告・連絡・相談の意味・違い・難しさをリーダーが正しく理解することができれば、「報連相をしっかりしろ!」なんて言葉、これから絶対言えなくなりますね。
リーダーは、報告する側、連絡する側、相談する側に立って事実を見て、導いていってあげてください。