・正しい評価のやり方が分からない
・部下が評価に納得してくれない
評価をする側の立場の人ならば、誰しも一度は感じること・経験することではないでしょうか。
本記事ではそんな悩みを抱えるリーダー(部下を評価する立場の人)に向けて、部下が納得のいく正しい評価の方法・ポイントを詳しく解説していきます。
ではさっそく本題に入っていきましょう。
評価の目的
まずは基本中の基本として、評価の目的を理解をすることからスタートです。
評価の目的
・人材の育成
・組織の成長
評価をしたのに部下が納得してくれなくて苦しんだ経験がある人の多くは、評価の目的を正しく理解できていない可能性が非常に高いです。
ではどのように間違った解釈をしてしまっているのか?
評価の目的(誤)
・評価をつけること
多くの人が『評価をつけること』が『評価の目的』だと勘違いをしてしまっています。
こうなってしまうと評価をつけるまでのプロセス(過程)が疎かになり、部下が評価に納得できないという結果に終わる可能性があります。
『評価をつけること』は『手段』であり、『目的』は『人材の育成・組織の成長』です。
必ず覚えておきましょう。
評価のプロセス
評価のプロセス(過程)は、最終的な部下の納得感を高めるために最も大事にしなければいけないことで、つまり、最終的な決定評価を部下に伝えるまでに、どのようなことをどれくらいの頻度で実施していくのかという話です。
またプロセスというのは『評価を決定するまでに何回面談をする』という仕組みの面だけではなく、『その面談を通してどのうようなコミュニケーションをとるのか』も含まれます。
私の勤める会社を例にして考えてみます。
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1目標設定面談
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2上期中間面談
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3上期期末面談
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4目標設定面談
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5下期中間面談
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6下期期末面談
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7評価FB(フィードバック)面談
1年間という評価期間を上期(1月~6月)と下期(7月~12月)に分けて、各期で目標設定・中間・期末と3回の面談機会が設定されています。各回の面談時間は最低でも30分とされていて、評価シートというものを使って、個室で1対1で行われます。
こうして1年間の評価プロセス(面談頻度)を見てみると、「これなら十分に納得感を得られますね!」と思う方が多いと思いますが、このパートの冒頭でもお伝えした通り、大切なことは面談の回数だけではなく、面談の中身も同じく大切だということです。
中身については次のパートで詳しく解説をしますが、まず最低限このパートでは『目標を設定する面談』⇒『中間の進捗確認をする面談』⇒『最終的な結果を確認する面談』の3つのプロセスは辿る必要があるということを覚えておきましょう。
評価目標設定
仮に『目標を設定する面談』⇒『中間の進捗確認をする面談』⇒『最終的な結果を確認する面談』というプロセスがあるとして、みなさんはどの面談が1番重要だと思いますか?
その答えは『目標を設定する面談』です。
部下たちは目標設定が終わったタイミングから半期、もしくは1年間、その目標達成に向けて日々努力していくわけですので、その後のモチベーションがこの『目標設定』の段階で決まるといっても過言ではありません。
ここでは目標設定のポイントを2つ紹介します。
1. 計測可能な目標か?
もしも『頑張る』という目標を設定したとして(こんなバカな話はないですが)、『頑張る』は計測可能ですか?
その答えは計測不可能です。
『年間成約件数100件』や『年間売上1,000万』や『年間労災事故件数1件以内』などのように、目標は必ず、誰でも算出可能な『数値目標』を設定する必要があります。
2. 達成可能な目標か?
『数値目標』を設定したはいいものの、達成が難しい非現実的な目標を掲げてしまわないように注意が必要です。
『年間成約件数100件』⇒『年間成約件数1,000件』
『年間売上1,000万』⇒『年間売上10,000万』
もちろん組織の規模によって達成可能か不可能かの判断変わるため、上記の例が達成不可能な目標かと言われれば一概にそうだとは言えませんが、大事なことは、しっかりと会社が求める数値(予算)に沿っているかを考えて目標設定を行うということです。
上記の2つのポイントを抑えておけば、目標設定の段階はとりあえずクリアです。
また、設定する目標は評価者が納得できていれば良いということではありません。部下(被評価者)も納得して初めて目標設定は完了です。「昨比がこうで~」や「今年の予算は~」といった形で、相手がしっかりと理解・納得できる説明をしてあげましょう。
コンピテンシーとは?
先ほどのパートで『計測可能』かつ『達成可能』な『数値目標』の設定が重要だと解説しましたが、実はもうひとつ重要な評価基準があります。
それがコンピテンシーです。
コンピテンシーとは?
高い成果を得られる人に共通する行動特性のこと

このイメージ図を見てもらえば分かりますが、数値は結果として明らかに目に見えるものです。定めた目標を達成したのか未達だったのかは明確ですから、評価は容易です。
逆にコンピテンシーは海面にはその姿を見せておらず、海の中に隠れていて見えません。
評価者はこの何もしない状態では見えづらい『行動』にも目を向けて、その結果がどのようにして得られたのかの理由、つまり、『創意工夫をして努力して得られた結果』なのか、それとも『何もせずとも得られた結果』なのかを探って、評価する必要があります。
このように評価基準を『数値』と『コンピテンシー』に分けて考える会社が多くなってきています。(私の会社では50%・50%の割合です)
コンピテンシーが必要な理由
ここで問題!
もしもあなたがりんごを売る商売をしている会社に勤めているとして、あなたは指定されたエリアA内で、1ヵ月間で1,000個のりんごを売る数値目標を上司と設定したとします。そしてあなたと同じ立場の同僚は、あなたと別なエリアB内で同じ数値目標だとしましょう。結果としてあなたは目標をクリアできず、同僚は目標を遥かに上回る5,000個を売ることができました。
この結果から正しい評価をつけられますか?
答えはNoです。
結果を見れば数値目標をクリアできなかったのはあなた。できたのは同僚です。もちろん同僚の評価はあなたよりも高くなるでしょう。しかし、この2人がどのような価値観で、どのような行動をとってこの結果を得られたのかは、この例文だけでは全く分かりません。
【あなた】
まずは一軒一軒歩いて回り、会社の様々な情報が記載されているチラシを渡しながらりんごの試食を勧めた。積極的な訪問営業と試食の効果が出始めて、1ヵ月が経過するあたりから徐々にネットでの注文が増え始め、定期便として毎週1ケースを購入される家庭や施設も出てきた。しかし目標の1,000個には届かなかった。
【同僚】
知人に片っ端から連絡をして購入してもらい、自分でも購入した。その後はなかなか購入してくれる人は現れなかったが、地域限定のテレビ場組でりんごのダイエット効果が取り上げられたこともあり、その後はネットでの注文が相次ぎ、結果として目標を遥かに上回る5,000個を売ることができた。
この例文を読めば説明は不要だと思います。
これが評価においてコンピテンシーが重要な理由です。
もう少し現実的で具体的な話をします。
小売り店を例に挙げれば、『近隣の競合が閉店』すれば必然的に『お客様は流れてきて売上は上がる』し、『近隣に競合がオープン』すれば必然的に『お客様は流れてしまい売上は下がる』。単純明快です。
もしも『近隣に競合がオープンして売上が下がっているお店』が、『競合に対抗するためにどうしたら良いか』を毎週ミーティングを開催して全従業員で必死になって考え、チラシを配ったり、価格変更の取り組みを企画したり、より接客レベルを上げて、お客様に『またこのお店に来たい』と思ってもらえるお店をつくる努力をしているとすれば、それは成果に繋がる行動特性として評価に値します。逆に、『近隣の競合が閉店して自然と売上が上がっているお店』がその外的要因にあぐらをかいて『現状維持』で楽をしてお店を運営していたとしたら、コンピテンシーの視点で評価は下がります。
成果は外的要因で大きく左右されるということが理解できていれば、『行動特性』を見る必要性がよく理解できるはずです。
面談は『報告』にしてはいけない
目標設定面談をした後に実施される次の面談の機会は、中間面談と期末面談です。
中間面談は進捗や見込み(このペースでいけばクリアできるかできないか)を確認したり、どのようなことが課題と認識しているかなどを確認する機会で、期末面談は最終的な結果を報告する機会です。
こうして考えてみると目標設定面談以外の面談は、どちらも『報告の機会』であることに間違いはありませんが、ここでの注意点は、単なる『報告の機会』にならないようにすることです。冒頭で紹介した悪い例の『評価をつけること』が『評価の目的』になっている人は、これらの進捗確認の面談や最終的な結果を伝える面談を、単なる『報告の機会』で終わらせてしまいます。
考えてみてください。
『報告をすること』で部下は成長しますか?
『報告の機会』でありながら『相談の機会』、もっとシンプルでダイレクトな表現をするなら、『成長の機会』になるようにしましょう。
全ての面談は『人材の育成』という目的のための手段です。
その都度、部下の強み・弱みを確認し、課題を共通認識にし、具体的なアドバイスをし、励まし、モチベーションを高い位置に引き上げましょう。
ワンポイント
中間面談で数値目標に対する進捗が良くない場合、部下のモチベーションが下がる傾向が見られると思います。そんな時はコンピテンシーの部分を評価・承認してあげましょう。『自分の行動は成果に繋がる行動だ』と自信を持たせてあげることです。
※こういった予め定めた(定められた)面談の機会以外にも、1on1の建設的なコミュニケーションを日常的に取り入れていくことが必要不可欠です。『成長へ関与する』という姿勢は日常的に示していってください。
人材育成のための評価制度
『評価をつけること』が『評価の目的』になってしまっている人と、『人材の育成』が『評価の目的』だと正しく認識できている人にはどのような違いあるのでしょうか。
最初のパートで『評価の目的』について触れた時に併せて解説しなかったのには理由があります。それは、これまでのパートで紹介した評価をする際の様々なポイントを理解したうえで解説をした方が、みなさん確実に理解・納得ができると思ったからです。
さて本題に戻りますが、誤って認識している人と正しく認識できている人の2人の行動・考えの違いを表にしてみます。

いくつか例を挙げましたが、このように評価の目的を正しく認識できているかいないかでこんなにもたくさんの違いが生まれます。
特に最後の『結果に対する責任』は1番の違いです。
よく私の周りに「うちのチームはみんな仕事ができなくてさ~。B+評価つけられる人がいないんだよね。」というMgrがいます。ここまでこの記事を読んだみなさんならもう分かると思いますが、『結果を部下のせい』にしている人は、『評価をつけることが評価の目的』になっている人の典型的な例ですよね。
そんなこと、恥ずかしくて私は言えません。
まとめ
最後にまとめとして、評価者のあなたが押さえておくべきポイントを整理して本記事を締めくくろうと思います。
評価制度を正しく活用して、組織の成長に繋げていってください。
評価のポイント
- 評価の目的を正しく理解する
- 面談機会(頻度・内容)を決める
- 計測可能な数値目標を設定する
- 達成可能な目標を設定する
- 面談を『報告の機会』に留めない
- 進捗に対してアドバイスをする
- 日常的に1on1でコミュニケーション
- コンピテンシー(行動特性)も評価する
- 評価の結果に責任を持つ
最後に
本記事では長々とたくさんの評価のポイントを解説しましたが、最も大事なことは『私はあなたの成長に関与していく』という、リーダーの人材育成に対する熱い情熱です。
チームメンバー(部下)の成長に関与することは、リーダーの役割のひとつです。