「私、リーダーを目指します!」
「頑張ります!」
「色々教えてください!」
成長意欲のある熱くポジティブな思い。素敵ですよね。
しかし、そんな熱い思いを汲み取っていざ人材育成をスタートさせたら、いつの間にか「不安です…。」や「やっぱり向いていないかも…。」といったネガティブな後ろ向きな思いに変わってしまい、ひとつの希望の光が消えてしまった…。人材育成に取り組んだことのある人なら、誰にでも経験があるかと思います。もちろんこれはリーダー育成に限らず、新人、ベテラン(既存)スタッフの育成でも同じことが言えます。
なぜ人材育成の取り組む多くの人がこのように、本人のモチベーションを落としてしまい、失敗をしてしまうのでしょうか。
その答えは、結論から言えば『前提条件をクリアできていないから』です。本記事のメインテーマでもあります。
人材育成には『本人への指導』と『安心して実践・成長できる環境づくり』の2つの側面があります。もう少し分かり易く言えば『本人と向き合うこと』と『周囲と向き合うこと』です。
本記事では私の実体験を交えながら、人材育成に取り組む多くの人が見失いがちな『人材育成に失敗しないための大前提』について解説をしていきます。
本人と向き合うこと
冒頭で挙げた人材育成の2つの側面のうち、メインになるのはもちろん『本人と向き合うこと』です。
成長意欲のある本人のことをまずは良く知り、どのようなことを教えるべきか考え、計画し、実際に教えてあげて、成長をサポートすること。これはまさに人材育成の醍醐味と言えます。
本人と向き合うこと
- 強みと弱みはどういった部分か
- どのようなスキルが不足しているか
- どのようにして教えていくか
- いつまでに習得してもらうか
このような本人とひたむきに向き合う努力がやがて実を結び、成長が目に見え始め、数字に表れ始め、個人、そして組織は成長していくことでしょう。
しかしこの『本人と向き合うこと』だけに目を向けてしまい、もうひとつの重要な側面に目がいかなければ、どんなにこちら側が熱心に指導をしたとしても、本人に成長意欲があったとしても、モチベーションは落ち、成長のスピードもみるみるうちに落ち、やがて成長がストップしてしまいます。
周囲と向き合うこと
次に、人材育成のもうひとつの重要な側面は『周囲と向き合うこと』です。
先述した通り、どんなに私たちが『本人と向き合うこと』に注力したとしても、『周囲のサポート』がなければ成長のスピードは落ち、最悪の場合は成長がストップします。これがまさに冒頭で登場した『失敗の正体』です。
周囲と向き合うこと
- 成長を阻害するメンバーはいないか
- チームメンバーへの丁寧な説明
- チームメンバーの理解と納得を得ること
- あたたかいサポートの依頼
- チームメンバー自身のケア
一言で言ってしまえばこれは『環境づくり』です。
例えば入社して間もないスタッフがリーダーを目指すと言って立候補した時、ベテランスタッフの中にはそのことを快く思わない人がいるかもしれません。最悪の場合は反発心からいじめ・いやがらせに発展する可能性もあります。これはリーダーを目指す本人の役割ではなく、育成をする側の重要な役割です。丁寧な説明で理解と納得を得て、サポートの依頼をし、適切なタイミングで一対一で周囲のメンバーともコミュニケーションを図り、育成プロセスに反映させていく必要があります。もしかしたらリーダーを目指す本人が厳しいことを言ってしまい、傷ついてしまうスタッフも出てくるかもしれません。そんな時は周囲のメンバー自身の心のケアも必要になります。
実体験で解説
ここからは私の実体験を簡単に紹介します。人材育成の2つの側面を、両輪で進めていくことの重要性を実感してもらえればと思います。
2020年12月
この時期、私が働く物流センターではリーダー不足(もうすぐ定年のリーダーも複数名いる)で頭を抱えていました。そんな中私は、『まずはリーダーを目指したいスタッフがどれだけいるのかをすぐに確認するべき』と提案し、副センター長が全スタッフと面談、意思確認をしました。その結果、各チームに複数名ですが『リーダーに興味がある』『目指したい』というスタッフがいることが分かりました。
2021年2月
リーダー候補者リストが出来上がったものの、その当時私が担当していたチームには立候補者はいなかったため、私は人材育成に参画できずにいました。しかも残念なことに、私以外のMgrたちは人材育成に消極的で、リストはできたのに全く育成がスタートしていない状況でした。
そんな中、会社として大きな人事異動が発生し、その流れで私は、リーダー立候補者が2人いるチームを担当することになりました。ひとりは過去に私が積極的に育成していたスタッフで、『チーフ』というサブリーダーのような役職を与えられていて、既にある程度リーダーシップを発揮できている若手の男性。もうひとりはまだ役職はついていなくて、入社して半年未満の女性スタッフでした。
2021年3月
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仕事中、事務所でたまたま2人きりになる機会があったので、私は意思確認のつもりで聞いてみました。

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〇〇リーダーがそう言ったのか…。
○○リーダーは現場をメインでリードしてくれているスタッフ(本社員ではない)で、荒浜さんがプレイヤーとして一人前になるように、入社してすぐに様々な仕事を教え、多少責任のある仕事も任せていました。プレイヤーとしての育成を進めてくれていたのです。
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○○リーダーとは一度この件で話してみるし、私も先走って指示だしをさせたりはしないから安心して。私が仮に荒浜さんに指示だしをさせるとしたら、いや、そもそもリーダーを目指してチャレンジしていくと決まったら、まずは周りのメンバーたちに私から丁寧に説明をする。そうしないと荒浜さんも周囲の目が気になるよね。

まとめ
紹介した実体験の会話は、時間がなかったのであの場面で終わりになりました。しかし少なからずリーダーを目指す荒浜さんに、『リーダーを目指す意欲(高いモチベーション)がある』ということと、『周囲からどのような見られ方をするのかが不安』ということ、更に○○リーダーの『育成の進め方に納得できていない』ということが分かりました。おそらく私が担当になる前の前任Mgrもそこまで配慮をせずに育成を進めていて、プレイヤースキルの育成を任せられたメインの○○リーダーも、プレイヤースキルとマネジメントスキルの線引きを見失ってしまっていたのでしょう。
私が担当Mgrになってストップをかけなければおそらく、荒浜さんは育成側主体、育成側のペースで様々なことにチャレンジさせられ(あえて極端な表現を使いますが)、同時に様々な不安と闘うことになったと思います。
人材育成が持つ2つの側面、『本人と向き合うこと』と『周囲と向き合うこと』。人材育成をする時にはこの両面を常に行き来をして、全体をマネジメントする必要があるのです。