リーダーシップを発揮するうえで必ずしも必要になるマネジメント。
マネジメントに模範解答はありません。
こんな時はこうする。そんな時はこうする。そうすることでこうなる。答えがありませんから、このようなことは絶対に分かり得ません。
でもリーダーである私たちはメンバーをゴールに導くためにマネジメントを必要とされ、日々考え、実行に移しているはずです。
本日はそんな答えのないマネジメントにおいて、私が日々どのような判断基準を持って選択をしているのかを解説していきます。
最後の判断基準
さっそく本記事の結論になりますが、私が大切にしているマネジメントの判断基準は『相手はどうしてほしいか』です。
多くのリーダーがチームメンバーをゴールに導くために『自分がどうしたいか』を考えます。もちろん私も同じ考え方をします。しかし彼らと私には明確に違う点があり、それは最終的に、『相手がどうしてほしいか』で判断をする点です。自分軸の思考だけでマネジメントを実行に移してしまっては危険ということです。
実は『最終的に』がキーワードで、イメージで言うと、まずは『自分がどうしたいか』を考えます。そして同時に『自分がどうするべきか』も考えます。そして最後に『相手はどうしてほしいか』を考えます。この段階での考え方をもう少し詳細にお伝えすると、抽象的に『相手の立場に立って考える』というよりも、もっと具体的に、『相手の立場に立って、自分の選択した(選択する)マネジメントが正しいかを客観視すること』がコツです。『相手はどうしてほしいか』を予測して100%一致させることはできませんから、こうした視点で客観視することが必要です。
この考え方はサーバントリーダーシップの『執事役』の特性と繋がっています。リーダーはまずは相手に奉仕する執事の役割を担う。もっと分かり易く言い換えるとサポート役に回ること。全ては『相手のため』です。これまでの解説を踏まえてまとめると『相手のため』になるマネジメントを選択しようということです。
具体例
相手の立場に立って、自分が選択しようとしているマネジメントを客観視するスキルは、こういった場面で活きてきます。私が体験した実話を例を挙げますので、ぜひ読んで参考にしてみてください。マネジメントの難しさ、そして『相手本位』のマネジメントの必要性が実感できると思います。
1ヵ月前

部下
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ガッキー
派遣会社に連絡したんですが、労災になりました。ご迷惑おかけして申し訳ありません…。

部下
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ガッキー
全然気にしなくて良いけど、そんなことより大丈夫なの!?
腰から下が思うように動かせない時があったり、時々足が痺れたりするんですが、とりあえずはコルセットを付けていればなんとか動けるので大丈夫です。この職場で続けていきたいので頑張ります。

部下
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ガッキー
そうか。とりあえずリーダーたちと相談して、少しでも軽い作業に入れるように作業スケジュールを見直すから!

部下
1ヵ月後

部下
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ガッキー
はい。そうです。またわがままになります。ごめんなさい。以前相談した時から随分と良くはなっているし通院の回数も減ってきてはいるんですが、なかなか完治しなくて。もう少し軽い作業をする時間を増やしてもらえると、完治に近づくと思いまして…。

部下
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ガッキー
そっか…。まだ治らないか。どこの作業が一番身体に負担が少ないかな?
お惣菜の仕分け作業が1番身体が楽と感じるので、そこをお願いしたいです。いつもいつもお願いばかりで申し訳ありません…。

部下
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ガッキー

部下
相談を受けたのは出勤前だったので、3分ほど話をして一旦話を区切った。
タイムカードをスキャンし、自分のデスクに座って、隣にいた現場リーダーに彼女の身体の状態と要望を伝えた。
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ガッキー
さっき派遣の〇さんから相談を受けてね。初日に痛めた腰が今も尾を引いてるみたいだから、今まで以上に軽い作業に入れてあげよう?
1ヵ月前から気にしてはいましたけど、なかなか自分を表に出さない方ですからね。毎日本当によく頑張ってくれてますし、できる限り本人の要望に沿えるようにしていきたいですね。

リーダー
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ガッキー
うん。今日はちょっと難しそうだから、明日以降できる限りそうしていこう。
私はその後、事務作業を得意のブラインドタッチで淡々と進めながらずっとこんなことを考えていた。
彼女の身体の状態は周りのメンバーには私から伝えるべきだよな。彼女から「腰が痛いので助けてください!」って、ベテランスタッフ(自社雇用のスタッフ)たちに言うことはできないだろうし。うちのチームのメンバーは理解のある人ばかりだから、「彼女だけ軽い作業にするなんで不公平だろ!」なんて思う人はいないだろうし。
ふと画面を見た時、得意のブラインドタッチで誤字があることに気づいて私は手を止めて考えた。
メンバーに伝えれば作業の配置転換もスムーズにできるようになるし、みんな彼女のことを気遣ってくれるようになるだろうから、マネジメントも楽になるよな。でも…。もしも周りのメンバーに私が言うことで、理解を求めることで、周囲の目が気になって彼女が働きづらくなってしまったらダメだ。最後は本人がどう思うかが大事だよな…。自分がMgrとしてどうしたいかじゃなくて、彼女がどうしてほしいかを聞いて決めよう。
私は仕事終わりの彼女に声をかけて、朝の続きを話しました。
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ガッキー

部下
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ガッキー
腰の状態がまだ良くならないことを周りのメンバーに伝えようと思うんだけど、どう?

部下
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ガッキー
私は今のメンバーと数年間一緒にやってきて、例えば「彼女だけ軽い作業にするなんで不公平だろ!」とか、そんな酷いことを言う人はいないのは分かってる。言っても大丈夫だと思うんだよね。みんな理解してくれて、重い物を持つ時に代わってくれたり、率先して軽い作業を任せてくれるようになると思うんだ。
ガッキーさんの言っていることは良く分かります。ありがとうございます。でも、私としては言ってほしくないです…。わがまま言ってしまってごめんなさい…。私は派遣としてみなさんよりも多くお給料をもらっているし、少なからず陰でそう思う人がいると思います…。怖いんです…。これまでもずっと「派遣会社さんの分もしっかり働かなくちゃ」っていう気持ちで仕事をしてきたから、その期待に応えられていない今の自分が悔しくて…。

部下
彼女はきっと、自分がすべきことと今の自分ができることのギャップに苦しんでいたのでしょう。現場で泣いてしまいました。
私は場所を人目に付かない場所に変えて、話を続けました。
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ガッキー
辛いよね。分かった。じゃあ周りのメンバーには今回の相談の件は言わずにやっていこう。

部下
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ガッキー
正直最初は『言おう』と思ったよ。でもしばらく考えて、こうして私が〇さんに周りのメンバーに『言う』か『言わないか』を相談しようと決めた時、1番は本人が『言ってほしい』か『言わないでほしいか』が大事だから、〇さんが望んだ方向性でやっていこうと決めていたから。言うことによって辛い思いが大きくなってしまうなら言わないから、安心して、自分にできることをやっていこう。

部下
まとめ
最後の実話はまさに『自分本位』か『相手本位』かで、取るべきマネジメントの選択が大きく変わった例だと思います。チームメンバーに公に体調の件を言った方が、Mgrの自分としては楽だったことに間違いはありません。しかし彼女はそれを望みませんでした。『自分がどうしたいか』や『自分がどうするべきか』を色々と思考することはもちろん重要なことです。しかし最後は『誰のためなのか』を考えること。そこを重要な最後の判断基準にして選択し、実行に移すことです。
みなさんも最後の判断基準を持ってみてください。